関連する委員会活動
[委員長] 久野 薫(神戸東RC)
百合学院高校 IAC顧問 吉川 晶子(RYLA学友)
日時:2012年5月 場所:バンコク
2012年バンコク国際大会参加報告書
《5月3日~5日 ロータリー世界平和シンポジウム》
私のバンコクでの国際大会は5月3日の平和シンポジウムからスタートした。オープニングの講演者エマニュエル・ジャンの講演に圧倒された。ジャンは元少年兵。私自身、学校の総合学習の中で児童労働を取り上げ、その際最も劣悪な児童労働の一つとして少年兵について学んだところで、大変興味を持って聴いた。実際の少年兵だった方から話を聞くことは、滅多にできるものではない。彼の言葉の端々が今でも心に残っている。
子どものときにアラブ人に叔父、叔母、そして母までも殺された彼は少年兵になったときアラブ人を殺したいと思っていたそうだ。後に教育を受け、アラブ人ではなく食糧やオイルが殺したということを知り、利益にフォーカスするだけの社会では平和を作ることはできないと思い、教育の必要性を強く感じたという。平和な国にうまれてきた人にとっては平和は大きな意味をもっていないかもしれない。しかし、パレスチナやイスラエルに住む人にとって平和は大きな意味を持っている。どのバスに乗るかで命が決まるような社会、飢えに苦しむ環境の中に住んでいると、悪いことばかり考えてしまう。極限状態に居たときには、タカやカタツムリ、ネズミも食べたが、亡くなった友を食べようとしたことすらある。そしてお互いが殺しあおうと考えてしまう。食べものを食べることができ、教育を受けることができるようになって、初めてゆるすということを知った。現在は教育によって平和な社会を作る活動をしている。
そして最後の講演会で聞いた、リーマ・ボーイ。2011年度のノーベル平和賞受賞者で、リベリアの紛争解決をした女性である。正義はバランスを持たなければ作れない。敵にも食糧を与え、食べることから平和を作っている。平和を構築する変革を起こすためには、情熱、コミットメント、意志、信じるものをもつこと。女性らしいスイートさを持ちながら、力強く平和を作るために歩き続けている彼女の姿に、同じ女性として大変心を打たれた。
昼食会や、晩餐会が行われ、その中で平和フェローの方々ともたくさんお会いすることができた。JAPAN NIGHTにも誘われ、参加することができた。出会った方々から刺激を受け、もっと多くのことを学びたいと思わされる、平和シンポジウムだった。
《5月6日~9日 国際ロータリー年次大会》
《開会式・友愛の家》
6日の開会式に行って驚いた。前日までの世界平和シンポジウムと桁違いの多くの人が参加されていた。どこが端なのか分からないほどの大きな会場に、様々な国から来た、多くの人々がいる。大会会場へ向かうバスも、バンコク市内の約20ヶ所のホテルから30分おきに出ており、あらゆる駅や空港、バス乗り場に大会のためのボランティアスタッフが配置されている。みんな英語が堪能で、親切。あらゆる場面で助けられた。ロータリーの大会がバンコク市内でも歓迎されていることがよくわかった。開会式ではレーザー光線の演出が行われ、フラッグセレモニーも行われた。こんなにたくさんの国にロータリークラブがあることにも驚いた。タイの人気シンガータタ・ヤングが国歌を歌い、RI会長の感動的なスピーチが行われ、7日からの本会議がますます楽しみになった。友愛の家には自身の参加したRYLAブース、現在クラブ顧問をしているインターアクトクラブブース、東北地方のブースや、広島平和ブース、周りきれないほどのブースを周り、話を聴くことができた。
講演に関してはいくつか印象に残ったものを書きたい。
《ヒュー・エバンス》
14歳のときにマニラのスモーキーマウンテンで暮らした夜、ゴキブリが自分の体を這い回り、ゴミの臭いもすごく、一睡もできないで朝を迎える体験をした。自分と同じ年齢の子供がそんな生活をしているとは信じられなかった。知ってしまったからには無視してはいけないと思った。彼は自分の国オーストラリアに戻って世界が貧困解決のために動き出してくれるように活動を始めた。選挙の直前にオペラハウスでPoverty will be History.というライトアップをして、政治家に貧困のための予算をたくさんとってくれるように公約をさせた。人は変えられないことと戦いすぎている。人間に変えられないことと変えられることとがあるので、変えられることを変えることが大切だ。「try」努力しますと、「will」そうなりますとは違っている。責任を背負ってリーダーとして活動できる人になろう。彼の「You can We」という言葉が残っている。自分の行動が私だけのものでなく、私たちのものに広がる自分になれることに憧れる。
《ムハマド・ユヌス》
貧困は体制の中で生まれる。体制を変えなければ貧困層は減らない。盆栽がなぜ大きくなれないのか。盆栽の鉢は小さい。しかし、その木を広い大地に植え替えると大きく伸びることが出来る。人々に地を与えること、それが変革ということである。確かにビジネスは利益を生むことが目的である。しかし、ビジネス的には小さいけれど、大きな満足感を得るビジネスもある。大学で経済学を学んできた自分にとっては銀行は未知の分野だった。なぜ銀行はお金のあるところにお金を貸すのか?何も知らないことが強みになって従来のやり方とは反対のことをすることでうまくいくこともある。貧困層に小さなお金を貸すビジネスモデルは他の国にも伝播し、他の企業と提携して行うこともできるようになった。テクノロジーで解決することの出来ない問題は想像力を使って解決することが出来る。不可能を可能にする時間は短くなっている。貧困を博物館で見る日は近い。私自身、教育という現場にいて、広い大地を生徒に与えるということはどういうことなのだろうと考えさせられる講演だった。2006年グラミン銀行総裁ムハマド・ユヌス氏はノーベル平和賞を受賞した。
《分科会 クラブ会員の多様性を促進する》
ロータリークラブは地域社会を反映するものでなければならない。その地域の構成している人々と同じようなものがよい。例えば、地域にラテン系の人が60%いるのに、10%のラテン系の人しかクラブに入っていないのは地域のために何が必要か、何をするべきかを理解することが難しい。同じ意味で若者や女性が少ないロータリークラブも問題である。会社の収益も女性がいたほうが上がるようにクラブも女性がいるほうが魅力的になる。女性や若者に入ってもらえるようなクラブ作りが重要である。現在の日本の企業の重役も、ロータリークラブのメンバーも女性は少ない。これからの、日本全体としての意識革命が必要なのかもしれないと感じた。
《閉会式》
クロージングの中でも最も印象的なのは来年度RI会長、30年ぶりの日本人会長である田中作次氏の講演である。戦後の何もない時代に生まれ、会社を経営していた。それまで自分と関わりのないものを気にもしていなかった。ロータリークラブに所属して職業奉仕の話を聴き、人として、職業人としてもっと高い目標を持って生きることを知った。人を助けることが平和につながるということに気付いた。だから来期の目標は「奉仕を通じて平和を Peace Through Service」である。これは誰の人生も豊かにするものである。超我の奉仕は誰の人生も豊かにするものである。自分の役割も奉仕を通して見えて来る。理念ではなく行動を起こして平和を示そう。
今回の大会を通して、すべては行動からということがよく見えてきた。私はまだまだ行動がたりないけれど、ここでの体験をこれからの仕事の中でも生活の中でも行動として生かして生きたいと思う。このような体験をさせていただいたことに大変感謝しています。ありがとうございました。